あなたの「困った」を「相談してよかった」に変える行政書士・相続コンサルタントのなかしま美春です。
全33回のコラム、第13回をお届けします。
この連続コラムでは、「相続でトラブルになりやすいこと」、そして「今できること」について、わかりやすくお伝えしていきます。最後に、関連する動画へのリンクがありますので、ぜひ併せてご活用ください。
このコラムが、相続について考える小さなきっかけとなり、
そして「家族で話す」「書き残す」という第一歩につながることを願って――
ぜひ最後までお付き合いください。
(全33回の一覧は>>こちら)
【連続❢相続コラム】第14回:相続人に「認知症」の方がいる

「母は認知症ですが、これから先、父の相続が発生しても、子どもの私たちがいるから手続きは大丈夫でしょう」
「妻の判断力は落ちてきてるけど、家族の仲がいいから、自分が死んだ後の手続きも簡単にできるはず」
高齢のご家族がいらっしゃる皆さん、そんな風に思っていませんか?
誰かが亡くなり相続手続きを行う場面で、相続人の中に【認知症】の方がいると、その手続きは一気に複雑になります。
今回は、その理由と事前にできる対策をお話しします。
遺産分割協議と「成年後見人」
誰かが亡くなり相続が始まると、相続人全員で遺産の分け方について話し合う必要があります。
この話し合いのことを「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」と言います。
遺産分割協議に参加ができる条件として、その相続人の方が「判断能力を持ち合わせていること」があります。
しかし、認知症などで判断能力を失っている方が相続人に含まれている場合、そのご本人が遺産分割協議に参加することはできません。
そのため、家庭裁判所に【成年後見人(せいねんこうけんにん)】の選任申立てをして、代わりに遺産分割協議に参加する代理人を選んでもらう必要があります。
成年後見人って、どんな人?
成年後見人とは、認知症などで判断能力が不十分な方に代わって、財産の管理や契約などの手続きを行う法的な代理人のことです。
家庭裁判所が選任するため、ご家族や親族がなる場合もありますが、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれるケースも少なくありません。
そして注意が必要なのは、成年後見人の役割は「相続が終わってからも続く」ということです。
※2025年9月現在
つまり、遺産分割協議が終わった後も、認知症の方が亡くなるまで成年後見人はずっと財産を管理し続けることになります。
弁護士、司法書士、行政書士などの専門家が成年後見人に選任された場合には、その報酬も継続して支払い続けなければなりません。
手続きが複雑になる理由
成年後見人の選任には、家庭裁判所へ提出する申立書の作成や必要書類の収集、審査のための時間がかかります。
これにより相続手続き全体が長引いたり、思わぬ費用や手間が増えるケースが少なくありません。
相続税の申告や不動産の名義変更など、期限が定められた手続きも多い中で、成年後見人選任のための時間が加わることで、残されたご家族にとって大きな負担となるのです。
さらに前述のとおり、成年後見人に専門家(弁護士や司法書士など)が選ばれれば、当然ながら専門家への報酬も支払わなくてはならず、金銭的な負担も強いられることになります。
行政書士の立場からの解決策
こうした手間や費用を減らすために、事前にできる対策のひとつが【遺言書】の作成です。
例えば、自分の相続人である妻が認知症になった場合に備えて、遺言書で「すべての財産を長男に相続させる」と具体的に指定しておけば、相続人である妻と子ども達は、遺産分割協議を行う必要がなくなります。
つまり認知症の妻のために、成年後見人を家庭裁判所で選任してもらう必要もなくなり、スムーズに相続手続きを進められるのです。
ただし、ここで注意すべき大切な点があります。
それは「認知症が進行すると、遺言書を書けなくなってしまう」ということです。
遺言書は「ご本人がしっかりと意思能力があり、意思表示ができる状態」でなければ有効に作成することはできません。
「まだ元気だから大丈夫」と思っていても、認知症はある日突然始まることもあります。だからこそ、元気なうちに早めに遺言書を用意しておくことが、大切なご家族を守る最善の方法になるのです。
【「困らない相続」がいちばん!】
いかがでしたか?
「まだ大丈夫」と思っていても、認知症は年齢に関係なく進行することもあります。
その時に、残された大切なご家族が大変な思いをせずに済むように、
今できること――【早めの遺言書】を作成しておくことをおススメします。
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不安を感じた方や、「うちのケースだとどうすればいい?」と思われた方は、ぜひお早めにご相談ください。
「あれ?私の場合はどうなんだろ?」と気になった方へ
このコラムの執筆にあたり、一般社団法人 相続診断協会の「相続診断チェックシート」のチェック項目の一部を参考にさせていただきました。
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