あなたの「困った」を「相談してよかった」に変える行政書士・相続コンサルタントのなかしま美春です。
全33回のコラム、第11回をお届けします。
この連続コラムでは、「相続でトラブルになりやすいこと」、そして「今できること」について、わかりやすくお伝えしていきます。
このコラムが、相続について考える小さなきっかけとなり、
そして「家族で話す」「書き残す」という第一歩につながることを願って――
ぜひ最後までお付き合いください。
(全33回の一覧は>>こちら)
【連続❢相続コラム】第11回:連帯保証人になっている

写真はイメージです
「昔、知人の借金の連帯保証人になったことがあるが、もう何十年も音沙汰がないし、もう問題ないと思う」
「親族の事業資金のために保証人になったけど、返済は順調と聞いているから大丈夫なはず…」
「甥っ子の奨学金の保証人と、賃貸マンションの保証人になっているが、まさか自分に請求されることはないだろう」
そう思っている方も少なくないかもしれません。
けれどもこの「連帯保証」、相続が発生すると、思わぬ形で相続人の肩に重くのしかかることがあります。
というのも、相続が始まると、被相続人(亡くなった人)のプラスの財産と同時に「マイナスの財産(債務)」も、引き継ぐことになるからです。
「保証人になっていたなんて知らなかった…」
「父親の財産が受け取れると思って相続したら、あとから借金の請求がきた…」
――「マイナスの財産(債務)」があることを知らずに、相続をすると、遺された家族はとても困ってしまいます。
■行政書士の立場からの解決策
こうした問題を防ぐには、まず「自分が連帯保証人になっていることを、あらかじめ家族に伝えておく」ことが大切です。 特に、保証債務の金額によっては、相続後すぐに「相続放棄(※1)」を検討する必要が出てくるため、早めの情報共有が重要です。
※1 相続放棄とは、相続発生の際に相続財産となる資産や負債などの権利や義務の一切を引き継がず放棄すること。
相続の開始があったことを知ったときから「3か月以内」に、被相続人(亡くなった人)の最後の住所地の家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出して行う。
✅ 自分が誰の連帯保証人になっているかを整理しておく
✅ 保証額や契約書の保管状況を確認しておく
✅ 相続人に伝えておく(エンディングノート等で)
相続の開始があったことを知ったときから「3か月以内」――あっという間に過ぎてしまいます💦
だからこそ、大切な家族が困らないように、今のうちから財産情報を整理し、伝えておくことがとても大切です。
保証債務があることを知らずに相続財産を処分してしまうと、単純承認(※2)したものみなされ、後から「やっぱり相続放棄したい」と思っても、相続放棄ができなくなります。
民法920条に「相続人は、単純承認をしたときは無限に被相続人の権利義務を承継する」と規定されており、相続財産を処分して単純承認したものみなされた相続人は、相続放棄をすることができなくなるからです。
※2 単純承認とは、被相続人(亡くなった人)の一切の相続財産を、無制限・無条件にすべて相続すること。
ここにも注意!
❗相続放棄ができなくなる意外なケース【3選】
①故人名義の車を売却・名義変更する
「もう使わないから」と思って、故人名義の車を売却したり名義変更したりすると、相続財産を処分したことになり、相続放棄ができなくなる可能性があります。
②実家の片付け中に、遺品を売却したり、故人の通帳や現金を引き出す・使う
遺品の処分・売却は相続財産の処分とみなされ相続放棄ができなくなる可能性があります。
「生活費が足りないから少し使った」など、故人の財産に手を付ける行為も、相続放棄ができなくなる可能性があります。
③遺産分割協議への参加
遺産分割協議に参加し、遺産分割協議書に署名・捺印すると、相続放棄ができなくなる可能性があります。
「そんなことで相続放棄ができなくなるなんて…」と後から知ることが多く、トラブルになりやすいポイントです。
「マイナスの財産」がある場合は、必ず家族に知らせておきましょう!
悩んだら、専門家へ!
✅大切な家族が困らないように、今のうちから財産情報を整理し、伝えておくことが大切
✅相続発生後、相続放棄をするかどうかで悩んだら、急いで専門家(司法書士・弁護士)に相談
【「困らない相続」がいちばん!】
いかがでしたか?
相続の対象は【プラスの財産】だけではなく、「借金」や「保証債務」などの【マイナスの財産】も含まれます。
保証債務は目に見えないことが多いため、なおさら注意が必要です。
だからこそ、「自分が保証人になっている」という情報を事前に家族へ伝えることが、
家族を守る、思いやりの生前対策になるのです。
「昔のことだから、多分大丈夫だろう」では済まされません。
「わたしのケースではどうすれば?」と思った方は、ぜひお早めに専門家にご相談ください。
✨遺言書は、あなたの想いを未来に届ける魔法です✨
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どうか手遅れになる前に、お早めにご相談ください。
「あれ?私の場合はどうなんだろ?」と気になった方へ
このコラムの執筆にあたり、一般社団法人 相続診断協会の「相続診断チェックシート」のチェック項目の一部を参考にさせていただきました。
「相続診断チェックシート」を使えば、ご自身の状況を診断することができます。
30個あるチェック項目に答えるだけで、ご自身の現状がわかり、「このまま何もしないと、何が問題になるのか」をあぶり出すことができます。
ご興味のある方は、「「相続診断チェックシート」診断希望」と、お気軽に当事務所までご相談ください(^^)