あなたの「困った」を「相談してよかった」に変える行政書士・相続コンサルタントのなかしま美春です。

全33回のコラム、第1回をお届けします。

この連続コラムでは、「相続でトラブルになりやすいこと」、そして「今できること」について、わかりやすくお伝えしていきます。

このコラムが、相続について考える小さなきっかけとなり、
そして「家族で話す」「書き残す」という第一歩につながることを願って——

ぜひ最後までお付き合いください。
全33回の一覧は>>こちら

第1回:親との口約束はトラブルの元!?

(写真はイメージです)

親御さんからこんな風に言われたことはありませんか?

「長男だから家を継いでほしい」
「長年、介護してくれたから財産は多く渡したい」
「〇〇はあなたにあげる」

けれど、親御さんとの「口約束」だけでは、相続トラブルにつながる可能性が高いんです。

その口約束、大丈夫?~相続トラブルの火種にしないために~

たとえ親が生前に何度も同じことを話していたとしても、
また、あなたがそれに同意していたとしても、
それを証明するものがなければ……

❶ 言った・言わないの争いになる

たとえば、親御さんが「全部あなたに任せる」と言っていたとしても、
それを聞いていたのが本人だけ、または一部の家族だけだった場合、
他の相続人が「そんな話は聞いていない」「本当に言ったの?」と疑問に思えば、
相続人同士で争いになる可能性があります。

相続人のうち一人でも「NO」と言えば、話し合い(遺産分割協議)はストップ。
家庭裁判所での調停に進むケースもあります。
こうなると、親御さんが希望していた内容が実現できないばかりか、
相続人同士の関係も悪化してしまうことが少なくありません。

❷ 法的効力がない

亡き親との口約束を証明することは難しく、その口約束が実現されることは、ほぼないでしょう。
たとえば生前に「長男に自宅を相続させる」と言っていたとしても、遺言書がなければ、
民法の規定に従って他の相続人が法定相続分や、場合によっては遺留分を主張し

結果として、親の希望通りにいかないケースが多いのが現実です。

❸ 感情のもつれに発展しやすい

相続では「お金」だけでなく、「感情」も深く関わってきます。
親が存命中は表に出ていなかった思いが、相続をきっかけにあふれ出すことも。

  • 「私は親の面倒を見たのに、なぜ兄と同じなの?」
  • 「あの子は大学に行かせてもらえたのに、私は行けなかった。なぜ同じなの?」

といった不満から、兄弟姉妹の関係が壊れてしまうこともあります。

対策方法は?

相続トラブルの多くは、実は「金額」ではなく、気持ちのすれ違いから始まることが多いんです。

こうした事態を防ぐためには、「親の想い」をきちんと形にして残すこと(=遺言書など)が何よりも大切です。

また私は、ご相談の中で、「付言事項」の活用もおすすめしています。

「付言事項」って何?

付言事項とは、法的な効力はないものの、遺言者の「想い」や「背景」を自由に伝えられる文章(手紙)です。

たとえばこんなふうに使いますー

「長男には自宅を相続させます。長年、私の介護をしてくれたことに感謝しているからです。」

「次男には現金を相続させますが、決して不公平な意図ではありません。」

「子ども達みんなが仲良く過ごしてくれることを願っています。」

など、財産分けの理由や家族へのメッセージを添えることができます。

なぜ、付言事項をつけるとトラブル防止になるの?

❶ 相続内容の“理由”がわかる

納得できなかったことでも、理由を知ることで「気持ちが落ち着く」ことってありますよね。
「なぜこの人に多く渡すのか?」という背景がわかれば、不満が和らぐ可能性が高まります。

❷ 親の気持ちが伝わる

遺産分割の内容だけでなく、「ありがとう」「ごめんね」「幸せに生きてほしい」といった親の気持ちに触れることで、家族の感情がやわらぎ、冷静さを取り戻しやすくなります。

❸ 兄弟姉妹の関係を守る「緩衝材」になる

「これは親の意思だ」「私たちで争って親を悲しませたくない」と、感情的な対立がエスカレートするのを防ぐ役割を果たします。

いかがでしたか?

家族の絆を守るためにも、
また、あなたの希望を叶えるためにも、
「書き残すこと」の大切さを感じていただけたら嬉しいです。

「あれ?私の場合はどうなんだろ?」と気になった方へ

このコラムの執筆にあたり、相続診断協会の「相続診断チェックシート」のチェック項目の一部を使用させていただきました。(相続診断協会さん、いつもありがとうございます!)

この「相続診断チェックシート」を使えば、ご自身の状況を診断することができます。
30個あるチェック項目に答えるだけで、ご自身の現状がわかり、「このまま何もしないと、何が問題になるのか」をあぶり出すことができます。
ご興味のある方は、「「相続診断チェックシート」診断希望」と、お気軽に当事務所までご相談ください(^^)